証拠が必要な場合とそうでない場合

 お久しぶりです。こんばんは。

 1か月ぶりの更新になりました。

 

 今日は、「証拠ないんですけど、どうにかなりませんか??」というご質問にお答えしたいと思います。法律相談でよく訊かれるんですよね。

 

 回答としては、大丈夫な場合と大丈夫でない場合があります。

 言い換えれば、主張立証しなくてはいけないのは当方と先方どちらなのかということです。

 

 裁判を進めていると、裁判官も神様ではないわけですから、真実はどちらなのかわからなくなる場合があります。でも、真実がわからなくても判決は書かないといけませんから(どちらかを勝たせないといけませんから)、こういう場合にどちらを勝たせるかあらかじめルールを決めておく必要があるわけです。言い換えると、真偽不明のリスクをどちらの当事者が負うのかという問題で、これを難しい言葉で言うと「立証責任」といいます。

 

 具体的には、①法律に従って権利を主張するほうがその根拠たる事実について立証責任を負い、②権利消滅を主張するほうが権利消滅の根拠たる事実について立証責任を負い、③権利を障害する方がその障害の根拠たる事実について立証責任を負う、というものです。

 

 たとえば、貸金返還請求訴訟について考えてみましょう。

 民法587条には次のように書いてあります。

 「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」

 貸金返還を求める当事者はこの条文を根拠とするわけですから、この条文をかみくだくと、①「・・・返還することを約して」(=返還約束)②「・・・受け取ることによって」(目的物の授受)ということが書いてあります。貸金返還を求める方はこの2つの事実を立証しなくてはいけないということで、この2つの事実が立証できないのなら、返還を求める側が真偽不明のリスクを負って負けるわけです。

 ですから、この条文が訴訟テーマになる場合、貸金返還を求める方は証拠が必要になるけど、貸金返還を求められた場合証拠は必要ないというのが原則となります。具体的には、貸金返還請求をしたい場合には借用書などの書面が必要になる場合が多いと思いますが、貸金返還請求をされた側は「これはもらったものである」という主張をする場合でも贈与契約書などを示す必要はないわけです。

 

 貸金返還を求める方がこれらの立証に成功した場合(裁判官に①②の事実が存在するとわからせた場合)、請求に対する反論は(1)「弁済しました」(2)「もう時効です」というのが考えられます。貸金返還請求権は存在していたかもしれないけど、今はない(消滅している)という主張です。これらは、真偽不明のリスクは権利消滅を主張する方が負います。つまり、裁判官に弁済したかわからせることができなかったなら弁済していないことになって貸金返還請求が認められることになり、時効が過ぎたかどうか裁判官にわからせることができなかったのなら時効は経過していないことになって貸金返還請求が認められることになるわけです。

 

 というわけで、まとめに入ると、そもそもその主張をこちらが証拠をもって主張しなくてはいけない場合(立証責任をこちらが負わなくてはならない場合)は証拠がなかったらどうしようもありませんし、そうでないのなら証拠がなくてもどうにかなる場合があるということです。

 

 以上が立証責任の一般論ですが、当事務所で多い離婚事件についてかんがえてみましょう。

 離婚事件は、裁判までいった場合には、離婚を請求する側が法律上の離婚原因を主張立証しなくてはなりません。相手方が「離婚には合意しない」「そんな事実はない」と言い始めて、当方が離婚原因を立証できなかったら、離婚できないままで終わります。普通に負けます。

 でも、離婚事件が前述した一般民事事件と異なるのは、この前段階として「調停」という段階があるということです。協議とかこの調停は話し合いなので、立証責任云々の話はありません。だから、証拠がなくても離婚調停は申し立てることができます。そして、離婚に本気でなければ裁判所を巻き込んで調停など申し立てないのですから、自分が相手と本当に離婚したいのだと意思表示をすることができます。離婚を切り出された方としても、弁護士から連絡がいった時点では頭に血が上って「自分は相手と離婚しないんだ!」という話になることもしばしばありますが、調停までいくと少し時間が経つためか仮にそんなことで粘ってもかつての生活が戻らないということがうすうすわかってきて、離婚に合意するようになります(もちろんそうならない人もいます)。そういう感じで合意までたどりつけたら、離婚原因云々の話はもう終わっているわけですから、結果として離婚原因についての証拠がなくても離婚が成功するということになるのです。

 

 もちろんこれが絶対というわけではありませんから、調停が功を奏さなかった時のリスクは承知しておく必要がありますし、私も受任の時にはそのへんをよく説明します。

 でも、離婚したい/離婚したくないで裁判までいくのは、私の感覚だと10件あって2件くらいかなと思います。ですから、離婚したい人は、証拠がない場合でもチャレンジしてみてもいいんじゃないかなと思います。

 

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